相続財産がない場合でも、特定のケースでは相続税の申告が必要になることをご存知でしょうか。
特例を適用することで相続税額が0円になるケースでは、申告をしないと特例が適用されず、本来不要な税金を支払うことになる可能性があります。
この記事では、相続財産が基礎控除額以下の場合でも申告が必要となるケースや、基礎控除額の計算方法、相続財産の洗い出し方などについて詳しく解説します。

相続財産が少ない場合でも、本当に申告が必要なの?

Mr.DELTA 特例を適用すると相続税が0円になる場合、申告することで税金が還付される可能性があります。
- 相続税申告が不要となる原則
- 例外的に申告が必要となるケース
- 相続税申告不要となる基礎控除額の計算
- 相続税申告不要となる財産と注意点
- 相続税申告の流れと期限
相続財産なしでも申告が必要なケースとは
相続財産がない場合でも、特定の状況下では相続税の申告が必要になる。
これは、相続税の計算方法や特例の適用条件が複雑であるためだ。
相続税申告が不要となる原則
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額を下回る場合、原則として申告は不要。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、例えば、配偶者と子供2人の場合、基礎控除額は4,800万円になる。
相続財産が4,800万円以下であれば、相続税は発生せず、申告も不要となる。
相続税申告が不要となるケースは、遺産相続全体の約92%を占める。
例外的に申告が必要となるケース
相続財産が基礎控除額以下でも、特例を適用することで相続税額がゼロになる場合は申告が必要になる。
主なケースは以下の通り。
特例・控除 | 概要 |
---|---|
配偶者の税額軽減 | 配偶者が取得した遺産額が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは相続税がかからない特例 |
小規模宅地等の特例 | 被相続人の居住用宅地の場合、330㎡までの部分の評価額が80%減額される特例 |
農地の納税猶予の特例 | 農地を相続した場合に、一定の要件を満たすと相続税の納税が猶予される特例 |
特定計画山林の特例 | 特定の要件を満たす山林を相続した場合に、相続税の軽減措置が受けられる特例 |
相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例 | 相続財産を特定の公益法人などに寄付した場合に、その寄付した財産に対応する相続税が非課税になる特例 |
相続時精算課税制度を利用した場合 | 生前贈与でこの制度を利用した場合、相続時に贈与財産を合算して相続税額を計算する必要があるため、遺産が基礎控除内でも申告が必要になる場合がある |
特例を適用することで相続税額がゼロになる場合でも、申告をしないと特例が適用されず、本来不要な相続税を支払うことになる可能性がある。
相続税申告が不要となる基礎控除額の計算
相続税申告が不要となるかどうかは、基礎控除額を計算し、相続財産の総額と比較することで判断できる。
基礎控除額を超える場合は申告が必要となる。
基礎控除額の計算式
基礎控除額は、以下の計算式で算出する。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
法定相続人の数え方
法定相続人とは、民法で定められた相続の権利を持つ人のことである。
配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の親族は、以下の順位で法定相続人となる。
- 子(またはその代襲相続人)
- 直系尊属(父母など)
- 兄弟姉妹(またはその代襲相続人)
相続順位が上位の人がいる場合、下位の人は法定相続人とならない。
相続放棄した場合の基礎控除額
相続放棄とは、相続人が相続の権利を放棄することである。
相続放棄した人は、初めから相続人ではなかったものとみなされるため、基礎控除額の計算における法定相続人の数には含まれない。
養子がいる場合の法定相続人数
養子がいる場合、実子と同様に法定相続人として扱われる。
ただし、基礎控除額の計算における法定相続人の数に含めることができる養子の数には制限がある。
- 実子がいる場合:1人まで
- 実子がいない場合:2人まで
生命保険金や退職金の非課税限度額
相続財産には、生命保険金や死亡退職金も含まれる。
ただし、これらの財産には非課税限度額が設けられており、以下の計算式で算出される金額までは相続税が課税されない。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
生命保険金や死亡退職金の合計額が非課税限度額を超える場合、超える部分が相続税の課税対象となる。
相続税申告不要となる財産と注意点
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額以下であれば原則として申告不要となる。
しかし、財産の種類や評価方法によっては、申告が必要となる場合もあるため注意が必要だ。
相続財産の洗い出し
相続財産は、現金や預貯金、不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も含まれる。
相続税の申告においては、これらの財産を正確に洗い出すことが非常に重要となる。
洗い出す財産の例は以下のとおり。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地・建物)
- 有価証券(株式・投資信託など)
- 自動車
- 貴金属
- 借金
- 住宅ローン
財産をリストアップすることで、財産総額を把握しやすくなる。
みなし相続財産の考慮
みなし相続財産とは、生命保険金や死亡退職金など、被相続人の死亡によって相続人が取得する財産のことだ。
これらは相続税法上、相続財産とみなされるため、相続税の課税対象となる。
みなし相続財産として扱われるものの例は以下のとおり。
- 生命保険金
- 死亡退職金
- 弔慰金
ただし、生命保険金や死亡退職金には非課税限度額がある。
生前贈与加算の確認
生前贈与とは、被相続人が生前に相続人に対して財産を贈与することだ。
相続開始前一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算される。
生前贈与加算の対象となる期間は、2024年以降の贈与の場合、相続開始前7年以内となる。
土地評価の注意点
土地の評価方法は、宅地や農地、山林など、その種類や利用状況によって異なる。
土地の評価額は相続税額に大きく影響するため、正確な評価が必要となる。
土地の評価方法の例は以下のとおり。
- 宅地:路線価方式、倍率方式
- 農地:倍率方式
- 山林:倍率方式
土地の評価は専門的な知識を要するため、税理士などの専門家に相談することをおすすめする。
財産評価における専門家への相談
相続財産の評価は、専門的な知識や経験が必要となる場合がある。
特に、不動産や非上場株式などの評価は複雑であるため、税理士などの専門家に相談することを検討すべきだ。
専門家に相談することで、以下のようなメリットがある。
- 適正な財産評価
- 税務上のアドバイス
- 申告手続きの代行
正確な財産評価を行い、適切な相続税申告を行うためには、専門家のサポートが不可欠となる。
相続税申告の流れと期限
相続税申告は、相続開始を知った日から10ヶ月以内に行う必要がある。
申告期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するリスクがある。
相続開始から申告までのスケジュール
相続開始から相続税申告までのスケジュールは以下のとおり。
期間 | 手続き内容 |
---|---|
相続開始後速やかに | 遺言書の確認、相続人調査、相続財産の評価 |
3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認の検討と申請(必要な場合) |
4ヶ月以内 | 被相続人の所得税の準確定申告 |
10ヶ月以内 | 相続税申告書の作成・提出、相続税の納付 |
申告に必要な書類一覧
相続税申告には、様々な書類が必要となる。
書類名 | 概要 |
---|---|
被相続人の戸籍謄本 | 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本。 |
相続人全員の戸籍謄本 | 相続人であることを証明する書類。 |
遺産分割協議書 | 相続人全員で合意した遺産分割の内容を記載した書類。 |
相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押印した印鑑が実印であることを証明する書類。 |
被相続人の預貯金残高証明書 | 被相続人が所有していた預貯金の残高を証明する書類。 |
不動産の登記簿謄本 | 不動産の所有者を証明する書類。 |
固定資産評価証明書 | 不動産の評価額を証明する書類。 |
その他相続財産に関する書類 | 有価証券、自動車、貴金属など、その他の相続財産に関する書類。 |

相続手続きってたくさん書類が必要で大変だな。

税理士に依頼すれば、これらの書類の収集や作成を代行してもらえるため、負担を軽減できる。
税務署への提出方法
相続税申告書は、税務署に直接持参するか、郵送で提出できる。
e-Taxを利用してオンラインで提出することも可能。
延滞税・加算税のリスク
相続税の申告期限を過ぎたり、申告内容に誤りがあったりすると、延滞税や加算税が課されるリスクがある。
税の種類 | 内容 |
---|---|
延滞税 | 納期限までに相続税を納付しなかった場合に課される。 |
過少申告加算税 | 期限内に提出した申告書の内容が実際より少なかった場合に課される。 |
無申告加算税 | 期限内に申告書を提出しなかった場合に課される。 |
重加算税 | 意図的に財産を隠したり、仮装したりした場合に課される最も重い税。 |
税理士への依頼検討
相続税申告は専門的な知識が必要となるため、税理士に依頼することを検討するのも有効な手段。
税理士に依頼することで、適切な申告や節税対策につながる可能性がある。
よくある質問(FAQ)
相続財産が全くない場合でも、相続税申告は必要ですか?
原則として、相続財産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税申告は不要です。
しかし、特例の適用を受けることで相続税額がゼロになる場合は申告が必要となることがあります。
相続税の基礎控除額はどのように計算しますか?
基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算します。
法定相続人の数によって基礎控除額が変わります。
相続財産が基礎控除額以下の場合でも、申告が必要となる特例にはどのようなものがありますか?
配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、農地の納税猶予の特例、特定計画山林の特例、相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例などがあります。
これらの特例を適用することで相続税額がゼロになる場合でも申告が必要です。
相続財産を洗い出す際に注意すべき点はありますか?
現金や預貯金、不動産といったプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も正確に洗い出す必要があります。
また、生命保険金や死亡退職金などのみなし相続財産も考慮に入れる必要があります。
生前贈与は相続税に影響しますか?
相続開始前7年以内(2024年以降の贈与)に行われた贈与は、生前贈与加算として相続財産に加算される場合があります。
相続税申告の期限はいつですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。
期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があります。
まとめ
相続財産が基礎控除額以下の場合でも、特例を適用することで相続税額が0円になる場合は申告が必要です。
- 相続税申告が不要となる原則と例外
- 基礎控除額の計算方法と法定相続人の数え方
- 相続財産の洗い出しと評価方法
- 相続税申告の流れと期限
相続税申告は複雑なため、ご自身で判断せずに、まずは相続税の専門家である税理士に相談し、申告の必要性や節税対策についてアドバイスを受けることをおすすめします。
