相続の「遺留分」とは?知っておきたい権利の基本を徹底解説
相続において、故人(被相続人)の意思は遺言によって最大限尊重されます。しかし、「全財産を特定の一人に」といった遺言が残された場合、他の家族の生活が脅かされてしまう可能性があります。そうした事態を防ぎ、遺族の生活を保障するために、法律で定められた最低限の遺産の取り分、それが「遺留分(いりゅうぶん)」です。
ここでは、遺留分の基本的な考え方から、誰が、どれくらい請求できるのか、そして具体的な手続きまでを詳しく解説します。
1. 遺留分とは?-最低限保障される遺産の割合
遺留分とは、配偶者、子、父母など一定の法定相続人に対して、法律上保障されている最低限の遺産取得割合のことです。
被相続人は原則として、遺言によって自分の財産を誰に、どれだけ渡すかを自由に決めることができます(遺言自由の原則)。しかし、この原則を無制限に認めてしまうと、長年連れ添った配偶者や、被相続人の財産形成に貢献してきた子どもが遺産を全く受け取れず、生活に困窮する事態も起こりかねません。
そこで民法は、遺族の生活保障や、相続人間の公平を図る観点から、遺言の内容よりも優先される権利として遺留分制度を設けています。
法定相続分との違い
- 法定相続分:遺言がない場合に、法律が定める相続割合の目安。相続人全員の合意(遺産分割協議)があれば、この割合と異なる分け方も可能です。
- 遺留分:遺言の内容に関わらず、相続人が主張できる最低限の権利。遺留分を侵害する遺言も直ちに無効になるわけではありませんが、権利者から請求があれば、侵害している分を取り戻すことができます。
2. 遺留分を請求できる人(遺留分権利者)
遺留分を請求できる権利を持つのは、以下の相続人です。
権利がある人 | 権利がない人 |
配偶者 | 兄弟姉妹 |
子(子が亡くなっている場合は孫などの代襲相続人) | |
直系尊属(父母、祖父母など) |